Anime Expo 2018オフィシャルレポートが到着!!!!
「ひそねとまそたん」より、樋口真嗣総監督、シリーズ構成の岡田麿里さん、モンスターコンセプトデザインのコヤマシゲトさんが登壇したAnime Expo 2018のオフィシャルレポートが到着しました!
イベントレポート
7月5日よりロサンゼルコンベンションセンターで始まった北米最大級のアニメコンベンション Anime Expo 2018の2日目、7月6日に、日本では先日放送を終え、北米では9月21日にNETFLIXにて配信開始となるオリジナルアニメ「ひそねとまそたん」のプレミアスクリーニングが開催された。Anime Expoには初参加となる「シン・ゴジラ」を手がけた樋口真嗣を一目見ようと、また彼が初めて総監督を務めたTVアニメーションシリーズをいち早くチェックしようと、約800人の北米アニメファンがイベントに行列を作っていた。
イベントでは第1話・第2話の上映が行われたほか、総監督の樋口真嗣に加えて、シリーズ構成の岡田麿里、モンスターコンセプトデザインを担当したコヤマシゲトと、滅多に見られない豪華メンバーがゲストとして顔をそろえた。
イベントでは第1話・第2話の上映が行われたほか、総監督の樋口真嗣に加えて、シリーズ構成の岡田麿里、モンスターコンセプトデザインを担当したコヤマシゲトと、滅多に見られない豪華メンバーがゲストとして顔をそろえた。
冒頭でステージに登場した樋口は、「ひそねとまそたん」の北米プレミアスクリーンに足を運んでくれたファンに向けて「私は中学2年生の時に『機動戦士ガンダム』に出会いました。ところがガンダムは初放送当時はそれほど人気がなくて、同級生で見ているのは自分を含めて2人だけでした。プラモデルが発売されるとガンダムに人気が出たので、誰よりも早くガンダムを見ていたのは自分だと勝ち誇ることができました。今日、このプレミアスクリーニングに足を運んでくれた皆さんも同じ自慢ができます。『ひそねとまそたん』をアメリカで最初に見たのは自分たちだ!と。」と謝意を述べた。
また、ファンが気になる作品内容に関するトークも行われた。日本ではすでに制作・放送も終了していることから、制作を振り返って苦労した点について訊かれると、「苦労したというよりは楽しかったという思い出しかありません。総監督の仕事は、スタッフのみんなに苦労してもらったり恨まれたり、不幸にするのが役目なので…」とコメントすると、会場に笑いが起き、「この場を借りて苦労して下さったスタッフのみんなにお詫びと感謝を申し上げます」と続けると、ファンからは拍手喝采が起こった。
樋口の退席後、「ひそねとまそたん」(英題:DRAGON PILOT -Hisone & masotan-) の英語字幕付き第1話の上映が行われた。かわいいキャラクター達やドラゴンが空を飛ぶシーンなどで終始歓声が上がっていたが、最も盛り上がったのはドラゴンがひそねを飲み込むシーン。第1話で何度か登場するこのシーン全てに会場が湧いた。ゲストの3名も舞台袖でファンと共に鑑賞し、北米ファンの反応を楽しんでいた。
続けて行われた後半のトークパートでは、シリーズ構成を担当した岡田麿里とモンスターコンセプトデザイン担当のコヤマシゲトの2人もステージ加わり、樋口との3人で作品の裏話で会場を盛り上げた。一緒に仕事をしてみてどうだったかという質問に対しては、樋口は次のように語った。「岡田さんに、一緒に何かやりませんか?と声をかけられ、とても嬉しかったのを覚えています。それがアニメになるか実写になるかはわからなかったけれど、岡田さんが「アニメいいじゃん!」と言ってくれて。今までアニメの総監督はしたことなかったけれど、50年生きてきて初めてアニメの総監督を真剣に考えましたね。背中を押してくれた岡田さんには感謝です。 でも、アニメというと絵にしなきゃいけない。そこで3人の名前が浮かびました。キャラクター原案はシンプルだけど感情豊かな表情を描ける漫画家の青木さん。変形するメカデザインなら世界一と言っても過言ではない河森正治さん。それにドラゴンは今、世界の最先端のエッジを切り拓いているコヤマさんしかいない。これらの3人の才能を合わせたら、これまで見たこともないものができるんじゃないかと考え、総監督に踏み切ることができました。」熱い思いを抱く樋口と同様に、岡田・コヤマも樋口との現場を大いに楽しんだとのことだった。
お気に入りのキャラクターは、という問いに対し、樋口はひそねという回答。「岡田さんが産み落としてくれた素晴らしいキャラクター。性格に難があり、周りにこんな人がいたら困るタイプ。でも、僕もそういう部分が自分の中にあると思うし、誰もが自分の中にも持っているけど知られたくない部分ではないでしょうか。迷惑だけど憎めない、魅力的なキャラクターです。」また、岡田は3話以降に登場するドラゴン(フトモモ)を上げ、理由を「かわいがっている愛猫みたい。疲れたら癒される我が家の猫になんだ
か似ているので、とっても愛着がわいています!」と語った。
また、コヤマに対しては「モンスターコンセプトデザインを行うに当たり、総監督からはどういう指示がありましたか?また、総監督も知らないこだわりはありますか?」との問いが投げかけられた。それに対し、「控室でも話していたのですが、樋口さんが知らないことは……まずないと思うんですよね(笑)。まそたんは、樋口さんのコンセプトの時点で黒とグレーのイメージだったので、デザインの際にもそれを引き継ぎました。色味はガンバスターを意識しているとよく言われるのですが、違います(笑)!樋口さんのインスタグラムに初期のデザインが上がっているので是非チェックしてみて下さい。 まそたんはシンプルでかわいいというオーダーでした。飛行機というのは男子にとっては“カッコいい”もので、ドラゴンもまた一般的なイメージでは “カッコいい”。なのでドラゴンから飛行機に変形するのは“カッコいい”ものが“カッコいい”ものに変形するだけになってしまうので、面白みがないんです。なので“カワイイ”ものが“カッコいい”ものに変形する、そのギャップを引き立たせたかったんです」と、控室でのエピソードも交えて語った。「原作を作る上で楽しかった点・苦労した点は?」という質問に対して岡田は、「作品の中にひそねの独白のシーンが沢山出てきます。考えるのは楽しかったのですが、そういうセリフを書くにあたっては、自分の中にひそむ穢れのない黒い部分を引き出すようにしていました。」というエピソードを笑いを交えながら披露した。
トークは、「ひそねとまそたん」の視聴を心待ちにしているファンに向けて、樋口からのコメントで締めくくられた。「制作が終了してから、1話を見直したのは今日が初めてです。改めて見返してみると当時とは違う発見があり、新鮮な体験でした。また、この作品は一週間に一度放送される作品として制作したので、確実に続きが気になる各話の終わり方を意識して作っています。みなさんにも次の話を楽しみにして頂きつつ、是非、二度三度とこの作品を鑑賞し、新たな発見をして頂ければ思います。北米では9月21日からNETFLIXにて配信開始となりますで、繰り返し見て楽しんでください!本日はお越し頂き本当にありがとうございました。」とのコメントがあり、ファンからの拍手喝采でトークパートは終了した。
その後に行われた第2話の上映は、日本以外で初めて公開されるインターナショナルプレミアとなった。第1話同様に様々な個所で笑いや拍手が起こったが、2話で初めて登場した幾嶋のシー
ンが最も受けていた。海外でいち早く見られるエピソードということで、ファンの興奮と喜びを肌で感じることができるイベントとなった。ラストには、樋口総監督・岡田麿里・コヤマシゲト・神田松之丞(変態飛翔生体CV)・岩崎太整(音楽)・南雅彦(BONES社長)の6名のサインと、樋口・コヤマによるまそたんのイラストが添えられた第1話の台本が1名にプレゼントされ、「ひそねとまそたん」の北米プレミアは大盛況の内に幕を下ろした。
また、樋口は前日に行われたNetflixのパネル「Netflix♥Anime」にも登壇し、作品の魅力などを披露した。作品のコンセプトについて聞かれると、「ドラゴンがファンタジーの世界ではなく、現代社会にいたらどうするか?危険な生き物なので隠さなければいけないだろうと考えた結果、(会場にいる)皆さんの多くがしているような“コスプレ”をさせることにしました。現用兵器のコスプレをさせて、現代社会でドラゴンを隠蔽できるのか?というのがコンセプトの一つとなっています」と、アニメファンにもおなじみのコスプレという手法を取り入れていることを明かすと、会場からは笑いが起きた。
続いてのアニメ作品と実写作品に関する質問に対しては、「アニメの仕事をしているときは実写演出っぽいといわれ、実写の現場にいくとアニメっぽい演出をしているといわれることがあります。そう言われているとだんだんと違いが分からなくなることがあり、両方に携われることが非常に幸せだという思いになります。私は今回は原作がある作品の映像化や過去に映像化された作品のリメイクではなく、オリジナル作品を作り出したいと考えたのですが、実写の製作現場では原作のある作品で自分らしさを出すことが非常に難しい状況にあります。一方で日本のアニメでは、自分らしさを出したオリジナル作品を作りやすい環境にあるため、アニメの仕事をさせていただくことが多くなっています」と述べた。質問に対して非常に真摯な回答をした樋口だが、通訳が英語で樋口の回答を伝える際に、する事がないのか、隣で自分が喋っているかのように口パクで合わせると、会場は大ウケした。
最後に、アニメ業界を目指す若者へアドバイスを求められると、もしかしたら今の時代にはそぐわないかもしれないがと前置きした上で「20代の頃には寝ないで仕事をしていました。寝るよりも仕事をしている方が楽しかったのです。同じような生活をしていた同世代のクリエイターたちも、現在は私と同じような地位で仕事をしています。なので、20代はそれぐらいの気持ちをもって仕事に打ち込んだほうが良いと私は思います」と持論を披露して、Netflixステージを後にした。